エルサレムで主夫はじめました

~~~~~~~~ 30年間のサラリーマン生活から早期退職をして、イスラエルのエルサレムに家族で住み、主夫をはじめました。 ~~~~~~~~~~~~~~インターナショナルスクールに通う子供たちの様子、イスラエルとパレスチナの日常、主夫の心境などをつづります。 内藤 徹~~~~~

【コラム】 コロナ休校とイスラエルの学校のネット活用

<コロナ休校で始まったオンライン授業>

イスラエルのコロナ対策は決定が早く、その実行も早い。3月12日、夜8時からの首相のテレビ会見で、翌日からの学校の閉鎖の決定が告げられた。まだ、感染者100人にも達しておらず、死者も0だったと思う。うちの小4のムスメと中2のムスコは、エルサレムのインターナショナルスクールに通っていたが、早速その夜10時過ぎに、小学校、中学校、それぞれ校長から、メールで明日の学校はなしと連絡が入った。

そして、中学は休みの初日から、すぐにZoomを使ったオンライン授業に切り替わった。実は、このような事態を想定して、ちょうどその日は遠隔授業を試行実施することになっていた。練習の予定が、いきなり本番になった訳だ。もともと中学では、普段から、スマホやPCを使って生徒同士で一緒に課題をやったり、先生に課題を提出したりしているので、環境的にも問題なく皆適応しているようだった。

初日は校長の話だけで終わったが、翌週からは普段からの時間割に基づき、授業が始まった。教科によって、普段と変わらないような授業を、Zoomを使ってやるものもあれば、Zoomの授業時間は短くして、各自でやる課題中心でやるものもあった。例えば数学は、先生が新しい単元の説明をプレゼンテーションに加筆する形で説明をし、生徒ともやり取りもしながら、普段の授業と変わらない感じで行われていた。

小学校も、休校開始の4日後に急遽Google Classroomを立ち上げ、毎日の授業が再開した。小学校は、中学校と違ってネットで先生と生徒がやり取りする機会はなかったので、一からの立ち上げだった。学校のITに詳しい先生がサポートに入り、それぞれの学年の先生が校長のもと一丸となって対応したようだった。その日からGoogle Classroom上で、担任の先生からの各科目での課題が毎日10通以上送られてきた。送られるメールには、PPTが添付されていたり、先生が授業のように話をする映像が添付されて来たりした。そして、生徒への課題が出され、その一部は翌日の朝9時までに写真を撮り、先生に送るように指示が出た。

さらに、校長からのビデオメッセージや、体育の先生による家でできる運動の情報、音楽の先生からのリラックスできる音楽まで送られてくるようになった。また、週に1回1時間ほどZoomの時間ができ、先生と生徒、生徒同士が話をして、つながりを感じる時間も取られるようになった。アートの作品を紹介したり、先生のリクエストで、みんなで面白い帽子をかぶってみたり。課題を日々やっていくのは、学校に行くのに比べて子供たちは楽しみも少なく、モチベーションも下がるので、このZoomの時間は、クラスのつながりを維持し、またモチベーションをあげる上でも、大事な時間だった。また、補講的にアシスタントの先生がリクエストに応じて、マンツーマンでZoomの時間をとってくれるようにもなった。

当初は、先生も生徒も親も使い方が分からず四苦八苦していた。親同士もSNSでつながっていて、そこでは使い方のやり取りがされていた。先生も、新しい授業スタイルで、さらに出した課題が膨大に返されて混乱したようで、走りながら徐々にやり方のルールができていった。

小学生は、子どもだけでは使い方も分からなければ、自立的に課題ができるわけでもないので、親の負担は相当大きかった。一緒に座り、PCを開き、ひとつずつメールを開く。書かれたことを理解し、必要なものはプリントアウトする。映像は一緒に見て、課題を確認する。集中が途切れ、他のことをやりだすので、近くにいながら様子をうかがっていないとならない。イスラエルは外出禁止令が出されたころのタイミングであり、またインターナショナルスクールは、共働き家庭が少なかったので、親が家にいない問題は特に話題にはならなかった。ただ、親の負担が大きいことや、子どもがたくさん通っている家庭では、端末が足りないことや、時間がかぶるといった課題がでてきた。

通信料に関しては、イスラエルはありがたいことにネット料金が安くて、携帯電話で十分すぎる50Gの容量でも月々1,800円ほどしかしなかったし、Wifiもほとんどの家庭で普及していた。ネット環境に課題がある家庭については、相談にも乗ると学校から説明もあった。

 

<普段の学校のネット活用>

今回、コロナ休校への対応で素早く反応したイスラエルのインターナショナルスクールは、普段から、生徒や保護者と学校との間でITのツールが活用されていた。これは、教員にとっても、生徒や保護者にとっても、便利で効率的な点が多い。

イスラエル自体、最近は、ICT分野等でのベンチャー企業の躍進が世界的に注目されている。日常生活においても、例えばレストランを予約すると確認のメッセージがすぐ届いたり、渋滞や抜け道の情報精度が高いカーナビのアプリが無料で提供され、誰もが使っていたりするなど、ICTによる便利なサービスが普及している。

普段の学校のインターネットの活用はざっとこんな感じだ。

 

1.学校運営におけるインターネットの活用

 保護者と学校とのやりとりは、普段は電子メールと、学校のホームページにログインして行う様々な登録手続きで完結している。入学時に、担任はもちろんのこと、校長から他の学年の担任までのメールアドレスが顔写真とともに配られる。学校を休む場合も、担任にメールで連絡するので、教員は電話応対の必要がない。学校からの連絡も、すべてメールでくる。コロナウィルスに対する政府の方針に基づく学校の対応についても、メールで頻繁に連絡が入ってきた。

クラス便りのようなものは特になく、時々学校全体からニュースレターがメールで送られてきている。中学では、担任がホームページを作り、クラスの様子や行事の写真を共有している。紙を使うのは、スクールトリップの時に簡単なしおりが配られたときや、イベントの参加のために保護者がサインをして提出したときぐらいだった。

定期的に行われる教員と保護者との面談は、日程が近づくとメールで面談時間を予約するスケジュール表のリンク先が送られてくる。そこで、早いもの順で面談の予約を入れる仕組みだ。

学校のクラブ活動の申し込みは、学校のホームページにパスワードで入って行う。早いもの順で登録を受け付けて、定員に達したら締切りになる。クラブ活動の費用も、申し込み時にPayPal(個人向けオンライン決済サービス)を使って支払われ、効率的に進められている。学校の中にITに強い教員がいて、その人が学校全体のIT活用の推進と支援をしている。

ちなみに、イスラエルの現地の学校では、通常の学校との連絡はSNSでされることが多いらしい。また、生徒の成績や出席状況の管理用に、国内の多くの学校で使われているアプリがあるとのこと。

 

2.授業におけるインターネットの活用

我が子が通う小学4年のクラスでは、Rising Starsという英国で作られた教育現場向けサイトを、授業や宿題で使っていた。(https://www.risingstars-uk.com/)

例えば、家のPCで英語の宿題をやる場合、問題文を読み10問の質問に答えると、その場で正解数が分かるようになっている。結果がすぐわかるので、子どももゲーム感覚で宿題をやるようになる。そして、回答結果は先生に共有され、各人のデータが蓄積されて表示される仕組みになっている。これを使うことによって、教員がこれまで使っていた採点やデータ管理の時間が効率化されることになる。

中学校では、生徒と教員のコミュニケーション用にManage Bacという米国で作られ、インターナショナルスクールで普及しているサイトを使用している。(https://www.managebac.com/)

このサイトでは、スケジュール、宿題、成績等を一元的に管理することができる。宿題の内容と締切りは教員から各人にこのサイトで連絡され、生徒はこのサイト上で提出する。教員にとっては、全生徒の提出書類が一カ所に整理されて集約されていることから、効率的に管理することができる。生徒も、すべての宿題の内容と締切りが一覧で見ることができ、出し忘れなどが簡単に確認できる。成績は、科目ごとに、普段のミニテスト、宿題、レポート、プロジェクト、期末テスト等の項目に分かれて点数配分が決まっているが、その点数を教員が随時更新し、各人が確認できる仕組みになっている。

 

このように、イスラエルではインターネットの活用により、休校中の授業の継続のみならず、教員の負担軽減と、生徒の学習の効率化が図られている。日本においても、多くの地域でゴールデンウィーク明けまで学校が休みになり、さらにインターネットを活用した教育の実施が重要な課題になっている。学校教育関係者からも、オンライン授業の実施に向けて様々な動きを始めている様子も聞かれる。文科省も徐々に動き出しているし、企業も通信費の負担や、端末の貸し出しなどの動きを始めている。学校休校は、GW明け以降もさらに伸びる可能性は十分ある。これを機に、学校が様々な関係者と協力して、更なるインターネット活用が進んでほしい。そして、いま日本にいる保護者としても、できることを進めていこうと思う。