イスラエルと聞くと、パレスチナとの紛争から治安の悪い印象ばかりが先行していますが、日常の治安は非常に良く、また経済的には一人当たりGNPは日本を抜いています。最近では、ICT分野等でのベンチャー企業の躍進が世界的に注目されています。日常生活においても、例えばレストランを予約すると確認のメッセージがすぐ届いたり、渋滞や抜け道の情報精度が高いカーナビのアプリが無料で提供され、誰もが使っていたりするなど、ICTによる便利なサービスが普及しています。
私は、エルサレムに来て1年半ほど経っており、小学校4年と中学2年の子どもはインターナショナルスクールに通っています。そこでも、生徒や保護者と学校との間でITのツールが活用されており、教員にとっても、生徒や保護者にとっても、便利で効率的な点が多いです。その学校での具体的な活用状況を、他のイスラエルの学校の様子とともに、お伝えしたいと思います。
インターナショナルスクールの外観
1.学校運営におけるインターネットの活用
保護者と学校とのやりとりは、普段は電子メールと、学校のホームページにログインして行う様々な登録手続きで完結しています。入学時に、担任はもちろんのこと、校長から他の学年の担任までのメールアドレスが顔写真とともに配られます。学校を休む場合も、担任にメールで連絡するので、教員は電話応対の必要がありません。学校からの連絡は、すべてメールできます。最近では、コロナウィルスに対する政府の方針に基づく学校の対応について、メールで頻繁に連絡が入ってきます。
クラス便りのようなものは特になく、時々学校全体からニュースレターがメールで送られてきます。中学では、担任がホームページを作り、クラスの様子や行事の写真を共有しています。紙を使うのは、スクールトリップの時に簡単なしおりが配られたときや、イベントの参加のために保護者がサインをして提出したときぐらいです。
定期的に行われる教員と保護者との面談は、日程が近づくとメールで面談時間を予約するスケジュール表のリンク先が送られてきます。そこで、早いもの順で面談の予約を入れる仕組みです。ちなみに、日本と異なり教員と保護者の面談時間は5分のみ。小学校は担任のみで、中学校は各教科の教員のうち、面談をしたい人を保護者が自由に選んで予約します。5分で何が話せるだろうかと思いましたが、生徒の様子や学業の進捗を聞く目的は最低限達成できると経験して感じます。また、もっとゆっくり話したければ、直接連絡して別に時間を設けることも可能ですし、お迎えのついでに立ち話をすることもあります。
学校のクラブ活動の申し込みは、学校のホームページにパスワードで入って行います。早いもの順で登録を受け付けて、定員に達したら締切ります。クラブ活動の費用も、申し込み時にPayPal(個人向けオンライン決済サービス)を使って支払われ、効率的に進められます。学校の中にITに強い教員がいて、その人が学校全体のIT活用の推進と支援をしています。
なお、イスラエルの現地の学校では、通常の学校との連絡はSNSでされることが多いようです。また、生徒の成績や出席状況の管理用に、国内の多くの学校で使われているアプリがあるとのことです。
2.授業におけるインターネットの活用
我が子の通う小学校では、Rising Starsという英国で作られた教育現場向けサイトを、授業や宿題で使っています。(https://www.risingstars-uk.com/)
例えば、家のPCで英語の宿題をやる場合、問題文を読み10問の質問に答えると、その場で正解数が分かるようになっています。結果がすぐわかるので、子どももゲーム感覚で宿題をやるようになります。そして、回答結果は先生に共有され、各人のデータが蓄積されて表示される仕組みになっています。これを使うことによって、教員がこれまで使っていた採点やデータ管理の時間が効率化されることになります。
中学校では、生徒と教員のコミュニケーション用にManage Bacという米国で作られ、インターナショナルスクールで普及しているサイトを使用しています。(https://www.managebac.com/)
このサイトでは、スケジュール、宿題、成績等を一元的に管理することができます。宿題の内容と締切りは教員から各人にこのサイトで連絡され、生徒はこのサイト上で提出します。教員にとっては、全生徒の提出書類が一カ所に整理されて集約されていることから、効率的に管理することができます。生徒も、すべての宿題の内容と締切りが一覧で見ることができ、出し忘れなどが簡単に確認できます。成績は、科目ごとに、普段のミニテスト、宿題、レポート、プロジェクト、期末テスト等の項目に分かれて点数配分が決まっていますが、その点数を教員が随時更新し、各人が確認できる仕組みになっています。
ManageBacの生徒側の画面例
イスラエルでも、コロナウイルスの影響で登校は禁止となりましたが、インターナショナルスクールでは、中学はすぐにZoomを使ったオンライン授業に切り替わりました。小学校は、4日後に急遽Google Classroomを立ち上げ、先生からの課題、校長や担任からのビデオメッセージや授業映像、家でできる運動やリラックスできる音楽まで送られてくるようになりました。特に小学校は親の負担が大きいですが、子どもたちは先生とチャットでやり取りもでき、学校とのつながりを感じながら過ごせています。ネット環境に課題がある家庭の相談にも乗ってくれています。
このように、イスラエルではインターネットの活用により、教員の負担が軽減され、生徒の学習が効率化されています。日本の学校教育においても、通信費が払えない家庭に国が補助することや、教員向けのIT研修等により、更なるインターネット活用を推進することが今急務だと考えます。