エルサレムで主夫はじめました

~~~~~~~~ 30年間のサラリーマン生活から早期退職をして、イスラエルのエルサレムに家族で住み、主夫をはじめました。 ~~~~~~~~~~~~~~インターナショナルスクールに通う子供たちの様子、イスラエルとパレスチナの日常、主夫の心境などをつづります。 内藤 徹~~~~~

#20 海外子持ち主夫、料理を語る

海外子持ち主夫(主婦)のお役目のなかで絶対欠かせないのは、料理、洗濯、子供の送り迎え。掃除は、まあしばらくほっといても文句を言われるぐらいで何とかなる。でも、食べ物がない、着る物がない、送り迎えに行かない、となるとたちまち生活が止まってしまう。

 

中でも料理は、毎日同じというわけにはいかないので手間がかかる。で、ここイスラエルでは外食は日本の倍ぐらいするので、ほとんど自宅で作って食べることになる。日本のように、帰りにスーパーで惣菜を買ってきたり、夕刻過ぎの割引シールのついた刺身を買って並べるなんてこともできない。こっちで気軽に買えるファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)や、シュワルマサンド(薄切り肉を削いでパン生地に包んだもの)は、もう飽きてしまい、子供たちは喜ばない。たまに妻も作ってくれるが、基本自分でやんなきゃならない。ムスメに言わせりゃ、「それがパパのお仕事でしょ。あたしだって毎日学校行ってんだから、パパはパパのお仕事ちゃんとやりなさいよ。」ということなんだけど。

 

で、海外主夫の料理。

目標は毎回子供が残さないで食べること。食べることは大事な楽しみで、心身の健康にもとっても大事。ホームランはいらないかわりに、セーフティーバントでも内野安打でもいいから、ともかく毎回塁に出ることを目指す感じ。で、自己評価では9割達成。夜はまだいいけど、朝は時間はないし、ネタ切れで、ご飯と味噌汁ばかりだけど。

 

じゃあ、何を作るか。

特別豪華とかでなく、好きなもの、あっ食べたいな、ってものを作る。好きだからと言って、あんまり同じものを作り続けてもダメ。間をあけて。そして味は毎回、少し変える。カレーだったら、日本のルーがメインか、こっちのペースト入れるか。生姜多めか、どの香辛料入れるか。肉は何か、野菜は何か。うまみを何でだすかなど。科学の実験のように、いろいろ少し変える。

 

気分やタイミングは大事。暑かったら冷たい麺とか。ここらでソースものを出そうかとか、家族の様子を見て出す手を変えるのは、ちょっとDJにも似てる?まあ、作れるものも限られているので、リストにして書き出しておき、作るものが思いつかなければ、それを見るようにしている。

 

たまたまあった材料によってメニューも変わる。今日はアジア食材店で大根がたくさん手に入った、とか、この間遠出をして買ってきて冷凍しておいた豚肉をそろそろ食べちゃおうかとか、日本からお土産の明太子があるぞ、とか。

 

子どもたちは手伝わせるとよく食べる。だから、なるべく手伝わせたいけど、頼んでもすぐやらないし、余計な手間もかかったりして、結局一人でやっちゃうことがほとんど。

 

ところで、エルサレムの食材事情だけど、JICA関係者が行く途上国と比べて、結構充実していて、なんでも手に入る。

野菜はキュウリ、ジャガイモ、ニンジン、キャベツ、もやし、ネギ、ピーマン、なす、ほうれん草、レタス、おくら、ニンニク、生姜などはスーパーや市場で普通に手に入る。アジア食材店に行くと、季節とタイミングで白菜や、細い大根が手に入る。大根が手に入らないときには、代わりにこちらにあるコールラビというキャベツとカブのあいのこみたいな野菜が使える。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%93

ゴボウ、山芋、みょうがは手に入らないから、この間フランスで見つけて、お土産に買ってきた。

 

肉は、鶏、牛、羊は売っているが、豚はユダヤ教イスラム教の人も食べないから普通の店には売っていない。ロシア人向け商店に行くと豚が買えるので、よく豚肉とベーコンを買いに行く。ただ、薄切り肉はなく、細かく切って売っていないので、買ってきたらまず適当な大きさに切って、小分けにして保管。牛肉は宗教上の理由で血抜きをされていて美味しくないので、冷凍された薄切り肉ぐらいしか使わない。あとは、もっぱら鶏肉。冷凍された手羽の大きなパックを買ってきて、袋に小分けにして冷凍庫に入れて使っている。

 

魚は、こちらの日本人におススメされた市場の魚屋があるが、サーモン3切れで1800円も払わされて以来、店から足が遠のいていた。でも、日本人主婦に教えられ、サバを丸ごと買いに行ったら、こちらも3匹1800円で、これはお得。で、ネットで調べながら自分でさばいてみたら、思ったほど大変じゃなかった。半冷凍なら内臓も簡単にきれいに取れて、肉を切るのとさして変わらない。あと、ユダヤ人は、うろこのない海産物は食べないので、魚以外の海産物を普通は売っていない。ので、アジア食材店で、冷凍の海老、イカムール貝などを買っている。

 

で、どう作るか。

日本でも、週の半分は役割分担で作っていたけど、こんなに毎回家族の料理を作るのは人生初。何か月か続けているうちに大分要領よくなってきた。最近はクックパッドなんぞもあり、作りたいもののレシピは簡単に手に入る。分量も詳しく書いてあるが、僕の場合は材料と手順さえわかれば、入れる量は適当。基本、味見をしながら調整していく派。少しずつ調味料を足し、物足りなければ、ちょっと違うものを入れたり。これはO型のやり方か?計量カップは、米を炊くときにしか使わない。

 

そして、徐々に自分の頭の中で料理を作るときの法則みたいなものができてきた。

いろんな料理があるけど、まあざっくり言えば、どれも

(ベースの味+プラスの味+入れる具材)×調理法

って感じで構造的にとらえることができる。

 

ベースの味は、大きく分ければ中華、和風、洋風の3種類。そのベースの味さえしっかりしていれば、大体美味しくできる。

 

和風のベースは、ネットにて日本で買ってきた万能和風だし。鰹節、サバ節、昆布、椎茸などが細かく刻んで紙パックに入ったやつ。どんな料理にも、その紙パックを破り適量を入れていく。味噌汁はこれと味噌の味で子供たちは残さず飲んじゃう。やっぱりダシが美味しければ基本はOK。

 

それに加えて醤油系なら、醤油、日本酒、みりん。これで大体の醤油系和風の料理の土台は完成。豚の角煮、ナスの煮びたし、ほうれん草のお浸しなどは、みなこれでOK。料理によって、塩、コショウ、酢、砂糖、ごま油、中華のダシを入れたり。例えば、酢を追加して、鳥のすっぱ煮を作ったり。あと、僕が好きなのは、生姜。とりあえず刻んで入れると、美味しくて食が進む。それ以外に、めんつゆをメインにしたり、ポン酢を使ったりするものもある。

 

中華のベースには、味覇(ウェイパー)を愛用。こちら、中華の万能ダシ。肉や野菜のうまみが入っていて、これさえ入れておけば、間違いはない。または鶏がら。あとは、塩、コショウ、醤油、ごま油。さらに、豆板醤や、海老のペーストなど。ここら辺を適宜いれて好きな野菜や肉、魚介をいれれば、炒めても、スープにしても美味しい。そのまま炒めれば野菜炒め、ご飯を入れれば、チャーハンとか。料理によって、牛乳を入れたり、トマトを入れたり、片栗粉を使ったり。こっちでよく食べるタヒーナ(ゴマのペースト)も使ったりする。

 

洋風は、よく作るのは、カレー、各種シチュー、パスタぐらい。まずはこっちでも手に入るクノールの固形コンソメ各種。それに加えて、ニンニクと玉ねぎを炒めれば、ベースの味は完成。そこにお湯と具材とルーを入れてぐつぐつと煮たり、パスタなら、オリーブオイルで炒めたり。味付けは、塩、コショウ、トマト、バター、牛乳、卵などを、料理に応じて使うぐらい。たまに、うちにある香辛料や、もらったハーブを使ったり。まあ、パスタは、たらこなど日本からの出来合いのパスタソースもよく使っているけど。

 

調理法は、大体は煮るか、炒めるか、焼くか。具材の中で、柔らかくなるまで時間がかかる野菜などは、早めに入れるか、小さく切れば大丈夫。食べログで、細かな工程や量が書かれているものも、大事なポイントと、入れる物さえ合っていれば、大体でそれなりに美味しくできる。

 

揚げ物は美味しいけど、汚れるし、油の処理も面倒だし、やり方も知らなかったので、日本ではやったことがなかった。でも、こっちに来てから、家族のから揚げへのリクエストが強く、ついに挑戦。こっちのコンロは電気コンロで火力が弱く、時間をかけても中まで焼けていなかったり、逆に一度熱くなると、今度はすぐ焦げたりと、最初はさんざんだった。でも、だんだん慣れてきた。他にも、玉ねぎやポテト、ナスなど、野菜のてんぷらや揚げ物を作ったりして楽しんでいる。

 

中でも美味しかったのはトンカツ。エルサレムから車で30分ほど走らせたパレスチナ側のクリスチャンの街、ベイト・ジャラに美味しい豚肉を売る店がある、と知り合いに連れて行ってもらった。クリスチャンは豚肉を食べるからね。で、肉屋に入ると、奥に皮をはがされた豚が吊るされ、様々な肉の部位をその場で切ってくれる。適度に脂がついた美味しそうな豚肉を買い、それをトンカツにして日本のソースをかけて食べた時は幸せだったな。

 

自分で考えて作り、一番試行錯誤したのはラーメンかな。最初のころは日本からの食材も今ほどなかったので、大好きなラーメンを何度も作った。アジア食材店で買える乾麺を片っ端から試し、スープは和風だしと中華だしをまぜた魚介と肉のWスープ系。それに醤油だったり、塩だったりを入れる。ちゃんぽんなら、バターや牛乳、魚介を入れたりして。そんな手作りラーメンを旨い旨いと家族ですすったのも良い思い出。

 

まあ、そんな感じで、「50%の労力で70点ぐらいを狙う」いつものゆるゆる作戦でやっている。

ちなみに、今夜は夏っぽくなってきたので、初めて冷やし中華に挑戦した。ツユの完成度と、麺の種類がやや今一つだったけど、珍しいこともあり、子どもたちは、からしを入れたり、柚子胡椒を入れたりしながら、みな喜んで食べてくれた。